日本不整脈心電学会は、不整脈学および心電学のさらなる発展を目指して心電学委員会を創設し、分科会として次の4つの研究会を母体とする心電学関連大会を春季に開催いたします。
- ・日本ホルター・ノンインベイシブ心電学研究会(JASHNE)
- ・心電情報処理ワークショップ(JSCE)
- ・体表心臓微小電位研究会
- ・心電図伝送システム研究会
これらの研究会は、これまで臨床医学系、基礎医学系、工学系の医師・研究者を中心に活動してきましたが、今後は薬理学系、獣医学系の医師・研究者、さらには臨床検査技師、臨床工学技士、看護師なども含めた活動を行っていきます。
(2020年6月10日)
4研究会について
(『日本心電学会30年の軌跡』より,発行年:2013年10月1日、編集:日本心電学会30周年記念誌編集委員会)
日本ホルター・ノンインベイシブ心電学研究会(JASHNE)
海老名総合病院心臓血管センター顧問/東海大学医学部循環器内科非常勤教授
田邉 晃久
日本ホルター・ノンインベイシブ心電学研究会(Japanese Society for HolterandNoninvasive Electrocardiolgy:JASHNE)は、長時間心電図法(ホルター心電図)を駆使して不整脈や狭心症の基礎的、臨床的研究を行う目的で創設された。しかし、近年、医・工学の著しい進歩により、心電情報の構築、分析およびその応用などが大幅に改善・改良・発展し、広く、深くなった。現在は、心拍変動解析、加算平均心電図、QT/RR解析、T-wave alternans(TWA)、T-wave variability(TWV)、Heart rate turbulence(HRT)、非線形解析、Wavelet解析、伝送心電図、心磁図などのノンインベイシブ心電学の研究、ペースメーカや植込み型除細動器に内蔵される心電情報解析のアルゴリズム開発や皮下植込み型ループ小心電計、遠隔モニタリングなどの研究、心臓突然死予知への研究などが主なテーマとなっている。
研究会の誕生は1981年11月「Holter心電図コロキュアム」の研究集会(岡島光治会長)に遡る。以降、年1回学術研究会が全国各地をめぐり開催され、毎回多数の一般演題発表、シンポジウム講演や外国研究者による特別講演などが行われてきた。本年、2013年の第33回研究会(池田隆徳会長)では、特別講演には米国ボストンのVerrier先生を招き、ホルター心電図を駆使した心臓突然死の層別法を発表いただいた。
本研究会の親(おや)学会として、日本心電学会、日本不整脈学会が存在する。本研究会の研究内容は心電学、不整脈学の中の1分野に特定されるが、今後も両学会と歩調を合わせて世界をリードする研究を推進しようと考えている。
心電情報処理ワークショップ(JSCE)
海老名総合病院心臓血管センター顧問/東海大学医学部循環器内科非常勤教授
田邉 晃久
医学・工学合同の心電学研究会である心電図信号情報処理ワークショップは、米国におけるInternational Society of Computed Electrocardiology(ISCE)の日本版をねらい、1982年10月、岡島光治、岩塚徹両博士による提案のもと、名古屋市郊外の研修施設で初めて開催された。発足の趣旨は、大学、研究所、企業における心電図信号・情報の処理や応用を専門とする医学系と工学系の研究者が、気軽に、小集会という形式で率直な意見をぶつけながら、自己研究発展に反映させようというものであった。研究会の継続とともに、組織的運営がなされ、原則として年1回、1泊2日(土・日)、会の趣旨を反映して温泉地の開催となった。1997年に行われた第13回の研究会(世話人:宮原秀夫先生)からは、演題記録が日本心電学会誌『心電図』のsupplementに掲載されるようになった。当初、本会は「心電図信号情報処理ワークショップ」と称していたが、筆者が世話人を務めた2000年の第16回研究会で「心電情報処理ワークショップ」と名称を簡略化するよう提案したところ、世話人会および総会で了承され、第17回研究会(世話人:白井哲郎先生)からはこの名称を用いている。
演題は医学系、工学系とも毎年増加し、内容の多様性も考え、第23回研究会(世話人:池田隆徳、中沢一雄両先生)からは世話人を医学系と工学系(基礎系)の計2人制とした。直近の第28回研究会(世話人:神谷香一郎、吉岡公一郎両先生)は、2012年10月に熱海後楽園ホテルで開催され、参加者80余名のもと、30演題が熱心に議論された。本研究会は、心電学の高度な専門領域を、医学者と工学者が一堂に会し、リラックスした雰囲気で議論する独特な研究会である。
体表心臓微小電位研究会
日本医科大学名誉教授/国際医療福祉大学教授
加藤 貴雄
加算平均心電図法による心室遅延電位の検討が臨床に導入された約30年前に、日本医科大学の早川弘一先生と日本大学の小沢友紀雄先生が始められた研究会で、当初はレートポテンシャル研究会として開催されていた。その後、ほかの様々な心臓微小電位や心電現象の微細な変動を体表から非侵襲的に捉えて、その意義を心電学的に考察する研究を討議する場として「体表心臓微小電位研究会」と改名し、毎年開催され、すでに23回を数える。最近では、ホルター心電図を用いた心室遅延電位の評価、心拍変動周波数解析(HRV)、T波変動解析(
TWA、TWV)、期外収縮後心拍ゆらぎ(HRT)、ウェーブレット解析など、新しい数学的アプローチを駆使した研究も数多く発表されている。
心電図伝送システム研究会
日本医科大学名誉教授/国際医療福祉大学教授
加藤 貴雄
心電図の電話伝送システムに関する研究発表の場として、2003年に日本大学の小沢友紀雄先生が始められた研究会で、年1回開催されている。現在、インターネットの急速な普及とGPSシステムの構築によって、携帯電話を含む電話回線を介して、世界中のあらゆる場所から心電図波形を伝送することが可能な時代になった。学校・企業における健診や介護の現場などでの心電図伝送の意義、マラソンや登山に際しての心電図チェックにおいても心電図伝送が試みられ、精度の高い心電図解析が行われている。また、この研究会が中心になって中国の心電図専門家との共同研究や合同学会(電話伝送心電図日中国際シンポジウムとして、日本と中国で交互に隔年開催)も開催され、国際交流を深めている。